限られた予算の中でできることを考える
永田:PR系のエージェンシーって、フリーランスの方もいらっしゃるんですけど、僕が知る範囲だと、多いのはレコード会社出身者の、やや上の世代の方々です。Aさんがおっしゃって下さったように、そういった方と金野さんの世代の方って、やっぱり広報に関する考え方が最初からぜんぜん違っていて、そこがすごく面白いし、可能性があるところじゃないかと思うんです。
レコード会社はやっぱり、最初からある程度宣伝予算があって、番組を取りに行くチームがつくられたり、大人数で動くことがあらかじめ決まっている
金野さんはインターネットによって可能性が開かれてきた時代から始めていて、「お金(予算)がない中で何ができるか?」っていうところで考えている。それが6人の人選にも現れています。カメラマンがいたり、文章書けて編集できる人がいたりね。クライアントが個人の規模であることをちゃんと見ている。たぶん、レコード会社出身の人間が6人集めたら、ぜんぜん違うキャラクターになると思うんです。
A:元○○みたいな方と知り合うきっかけもあるんですけど、2時間くらい自慢話で終わっちゃう。
一同:(笑)。
A:「俺、これやってきてさ――」で、具体的な話はひとつもなく「では、また機会ありましたら」みたいな感じで終わってしまう。だから音楽業界じゃないところから切り込んで来てくれる方と組むというか、いっしょにお仕事させもらうことの方が多くて。
永田:さっきレコード会社出身――という話をしたけど、やっぱりいちばん違うところはお金に対する考え方ですよね。いくらの規模で考えようかといったときに、5万円って言われて、「えー、5万円しかないの?」って言うのか、「5万円でできること」を必死に考えるところから始められるか。そこがいちばん違うところじゃないかな。金野さん、ほかに補足しておくことはないですか?
金野:今の流れで言うと、僕は海外のPRエージェンシーや一般企業のPRの部署、PR会社などが、何をやっているかをふだんから収集しています。外のノウハウを違和感のないように流し込む。「接続する」というか。それはめちゃくちゃ意識しています。
一般企業のPR手法をそのまま落とし込めるかといったら、できないことの方が多いんですけど、やってみたらすごいうまくいったこともあって――その均衡点を見つけるのに苦労しているんですけど――そこに価値があると思っています。事務所の方にも、レーベルの方にも「俺らがやれることは俺らがやるから、できないことをやって」と明確に言われるんですね。なので、その方向で間違っていないという実感はあります。
永田:今の10組のクライアントは、いずれもお客様の方から連絡があったパターンですか?
金野:えーっとですね……、全部そうですね。非常に面白いのが、ブログを書くにつれて周辺の人からの紹介が増えて行くという。意地悪く言えば、ブログで力量を見定められて、ある沸点を超えると「ああ、こいつ信頼していけるわ」って、知り合いから依頼が来る感じですね。